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中央慈善協会設立趣意書
中央慈善協会設立趣意書
時運の進暢に伴ひ文明の諸国は今や百方苦心して慈恵救済の道を講ぜざるなし。而して其の要義とする所を推すに、恤みて之を傷らざるを主とす。能く養ひ、能く教へ、先づ自営自活の民たらしめ、然る後に救済の事や始めて完きを期することを得べし。若し惻隠の情に促されて徒らに一時の施与を試み、或は名利の念に駆られて故らに企画経営を濫りにするが如きことあらば、延て惰民を助成し、独立自営の精神を傷害すること必ずや尠からざらん。是れ慈恵救済に就き最も慎重なる考量を要する所以なり。
惟ふに我邦済貧恤窮の事たる古来郷党隣保の情誼に依つて行はれたり。然れども其施設や多くは一時の施与に止まり、所謂恤みて傷はず、能く養ひ、能く教ふるの真諦を発揮せるものに至ては殆んど之を見る能はず、近時々運の発展は各種の慈恵事業を勃興せしめ其の施設も亦漸くにして本来の真義に率由せんとするに至りしと雖も、其の画策や尚未だ深く世人の同情を鍾むるに及ばず、其の活動も亦随ひて十分なる能はず、甚だしきは往々慈善を標榜して実行之に伴はず、却つて之が為に斯業の発達を妨ぐるなきにあらず。且や篤志の資産家ありて或は斯種の事業を経営せんとするも就て謀るべき機関なきが為、遂に其目的を達する能はず、或は資金を投じて事業の補助を為さんとするも其選択に苦まざるを得ず。是等の事情ある我邦に於て斯業の未だ振はざる主因たり。乃此間に処して慈恵救済の方法を講究し、一面には当事者を指導誘掖し、他面には慈善家をして其向ふ所を知らしむるは実に現下の急務なるべきを信ず。吾等因つて自ら揣らず茲に中央慈善協会を組織して先づ左に掲ぐる事項を遂行し、以て此急要に応ぜんとす。希くは大方の諸彦、時代の要求に鑑みて斉しく此の挙を賛襄せられんことを。
- 一 内外国に於ける慈恵救済事業の方法状況及其得失を調査報告すること。
- 一 慈善団体の統一整善を期し、団体相互の連絡を図ること。
- 一 慈善団体と慈善家との連絡を図ること。
- 一 慈恵救済事業を指導奨励し、之に関する行政を翼賛すること。
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