分野別の取り組み
障害者の福祉
※ 障害のある人をめぐる表記については「障害者」、「障がい者」等が用いられていますが、ここでは固有名詞等を除き、法律上用いている「障害者」で統一しています。
障害者福祉制度の沿革
障害種別毎の福祉から障害者基本法、障害者自立支援法制定まで
わが国における障害者への福祉サービスは、戦後、「生活保護法」に位置づけられた救護施設等における取り組み以後、「身体障害者福祉法」、「知的障害者福祉法」、「精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)」といった障害の種類別の法制度が成立し、それぞれに拡充が図られてきました。このことは、障害種類別に基盤整備が進められてきた一方で、制度間の格差や制度の谷間に陥るといった弊害を生じさせるものでもありました。
こうした状況のなかで、1970(昭和45)年には障害の種別を超えた「心身障害者対策基本法」が成立、その後、ノーマライゼーションの理念の社会的な広がりとあいまって、1993(平成5)年には同法の改正により、障害者施策の基本となる「障害者基本法」が制定されました。
「障害者基本法」は、精神障害を明確に定めたこと、また障害者計画を策定すべきものとしたことなど、その後の施策のあり方に大きな影響を与えることとなりました。2004(平成16)年の法改正では、基本理念として障害者への差別をしてはならない旨が規定され、都道府県・市町村の障害者計画の策定が義務化されました。
社会福祉基礎構造改革により2003(平成15)年に施行された「支援費制度」は、サービスを利用者自らが選択し、事業者との契約に基づき利用する利用者本位のサービスをめざすもので、ホームヘルプやデイサービスといった「居宅支援」サービスの充実も図られました。しかし、急増した地域生活支援へのニーズに国や地方公共団体の予算確保が困難となり、制度発足直後から財源問題が生じ、また地域や障害種別によりサービス水準が異なるといった課題も表面化しました。
そこで、「支援費制度」の理念を継承しつつ、これら課題を解決するため、2006(平成18)年からは「障害者自立支援法」が施行されました。同法により、障害種別(身体・知的・精神)を問わないサービスの一元化や実施主体の市町村への一元化、施設・事業体系の再編、利用者負担の見直し、支給決定の客観的な尺度となる「障害程度区分」の導入などが行われました。しかし、利用者負担について原則1割の定率負担とする「応益負担」方式が導入されたことや、受けられるサービスの制限が生じる「障害程度区分」には多くの批判が寄せられました。
これを受け、「障害者自立支援法」は、2010(平成22)年に児童福祉法等とあわせて改正され、「応能負担」(所得に応じた負担)を原則とする利用者負担の見直し、相談支援体制の強化、障害児支援の充実・強化としての施設体系の一元化や新サービスの創設などが図られました。
障害者権利条約批准と、障害者総合支援法等法制度の拡充
国際社会においては、障害者の権利保障に向けた取り組みが進められ、2006(平成18)年には国連総会で「障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)」が採択されました。条約は、さまざまな政策分野において、障害を理由とする差別の禁止と「合理的配慮」(障害者が他の者と平等に全ての人権等を享有・行使するために必要な調整等)を求めています。
わが国は2007(平成19)年に署名した後、条約締結に向けて国内法の整備を進め、2014(平成26)年に批准しました。
- 2011(平成23)年障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)公布
- 2011(平成23)年障害者基本法 改正
- 2012(平成24)年障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)公布
- 2013(平成25)年障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)公布
なお、2022(令和4)年には国連「障害者権利委員会」による初の対日審査の総括所見において、入所施設からの地域移行が進んでいないこと等について、勧告や要請を受けました。
権利擁護と虐待防止の取り組み
2012年に公布された「障害者総合支援法」は、それまでの「障害者自立支援法」を改称し、改正障害者基本法を踏まえて法の目的規定を改正、基本理念を創設したほか、「障害者」の定義に新たに難病患者等の追加や、「障害程度区分」に代わる「障害支援区分」の導入等が図られました。
さらに2016(平成28)年の見直しにより、地域での自立生活に必要な「自立生活援助」や「就労定着支援」等の新規事業が定められたほか、重度訪問介護や医療的ケアを要する障害児支援等の充実が図られました(2018年4月施行)。
障害福祉サービス等報酬改定等への対応
障害者が希望する地域生活の実現に向けて
2022年9月の国連「障害者権利委員会」の総括所見では、障害者が「どこで誰と地域社会において生活するかを選択する機会の確保」を可能とすることが要請されました。
同年12月、障害者総合支援法が一部改正され、障害者の地域生活の支援体制の充実、障害者の多様な就労ニーズに対する支援、障害者雇用の質の向上のほか、難病患者や小児慢性特定疾患児童に対する支援が強化されることとなりました(一部を除き2024年施行)。
具体的には、障害者等の地域生活に係る支援体制を充実すべく、グループホームの支援内容にひとり暮らしを希望する利用者への支援を位置付けることや、地域生活支援拠点や基幹相談支援センターの整備・設置を市町村の努力義務とすることが盛り込まれたほか、就労アセスメントの手法を活用した新たな支援(=就労選択支援)が制度化されました。
その他、障害者差別解消法は、民間事業者等における合理的配慮の提供について、それまでの努力義務が2021(令和3)年改正で義務化となりました。
2023(令和5)年3月には、改正法の円滑な施行のための基本方針とともに、施行日(2024年4月)が閣議決定されました。
また、全ての障害者があらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が重要なことから、2022年5月、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」(障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律)が施行されました。
さらに、2024年を始期とする第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画の「基本指針」(2023年5月 告示)では、入所等から地域生活への移行、地域生活の継続への支援を進めるため、地域移行者数や施設入所者数削減に係る成果目標が示されました。しかし、地域生活を支える社会資源の不足、また拠点の整備等は依然、課題となっています。
“どのように暮らし、どのように働きたいか”など、障害のある本人の願いをできる限り実現していけるよう、意思決定や自己実現の支援を充実することが今後の障害者福祉には一層求められます。国においては、国連「障害者権利委員会」の総括所見の内容を踏まえたさらなる施策検討が進められています。
障害者の就労
本会では、障害当事者団体や関係施設協議会等と連携し、安全で安心して地域生活を送ること、また共生社会の実現をめざした地域での支え合い等について課題意識を共有し、調査研究活動や提言・要望活動に取り組んでいます。
- 新規ウインドウで開きます。全国社会就労センター協議会
- 新規ウインドウで開きます。全国身体障害者施設協議会
- 新規ウインドウで開きます。全国救護施設協議会
- 障害関係団体連絡協議会(障連協)
- 全国厚生事業団体連絡協議会
関係年表(障害者の福祉をめぐる展開)
1949(昭和24)年 |
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1952(昭和27)年 |
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1960(昭和35)年 |
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1968(昭和43)年 |
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1970(昭和45)年 |
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1981(昭和56)年 |
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1982(昭和57)年 |
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1985(昭和60)年 |
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1986(昭和61)年 |
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1987(昭和62)年 |
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1990(平成2)年 |
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1992(平成4)年 |
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1993(平成5)年 |
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1995(平成7)年 |
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1998(平成10)年 |
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1999(平成11)年 |
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2003(平成15)年 |
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2005(平成17)年 |
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2007(平成19)年 |
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2009(平成21)年 |
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2010(平成22)年 |
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2011(平成23)年 |
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2012(平成24)年 |
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2013(平成25)年 |
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2014(平成26)年 |
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2015(平成27)年 |
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2016(平成28)年 |
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2018(平成30)年 |
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2020(令和2)年 |
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2021(令和3)年 |
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2022(令和4)年 |
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