福祉のガイド
全国各地の福祉の実践事例(見る・わかる)
身近な地域での支え合い・助け合い~社会的孤立を防ぐ
住み慣れた地域で暮らしていくうえでは、法律上に規定された制度や事業だけでは対応できない、様々な課題が生じることがあります。
身近な地域での助け合い・支え合いは、そうした課題を解決するとともに、コミュニティの力を強め、暮らしやすい地域づくりにつながります。
- 「結い」の心で高齢者、母子世帯、障害者世帯を支えるスノーバスターズ
(八幡平市社協、西和賀町社協【岩手県】) - 住んでいてよかったと思える団地に(墨田区白髭団地【東京都】)
- 「ともに生きる・笑顔のまちづくり」をめざす
(出雲市大津民生委員児童委員協議会【島根県】)
「結い」の心で高齢者、母子世帯、障害者世帯を支えるスノーバスターズ(岩手県)
県内で横のつながりを持った除雪ボランティアを組織化
豪雪地帯を抱える岩手県では、県社会福祉協議会が主体となり「岩手県スノーバスターズ連絡会」を結成、現在15市町村、1500人が参加し、横のつながりを持った本格的な除雪ボランティア活動が行われています。
高齢化で除雪作業が困難な世帯が増加
毎年2メートル近い積雪量を誇る日本有数の豪雪地帯という厳しい自然環境は、そこに暮らす人々がお互いに助け合い、励ましあって生活するという「結い」の心を育んできました。しかし、平成5年12月に沢内村社会福祉協議会が催した地域福祉座談会では、特に高齢者世帯が増加していること、地域連帯感が薄くなっていることが危惧として挙げられました。
そこで、同じ問題を抱える県内5町村(旧沢内村・旧湯田町⇒現西和賀町、雫石町、旧松尾町・旧安代町⇒現八幡平市)でそれぞれ除雪ボランティアを組織化し、活動が開始されました。
冬場の安否確認、閉じこもり防止の効果も
「岩手県スノーバスターズ連絡会」の中でも、その発祥の地である八幡平市社協、西和賀町社協(岩手県)では毎年12月から3月の間、雪かきボランティア「スノーバスターズ」が高齢者、障害者世帯等を巡回しながら除雪作業を行っています。ボランティアは、除雪作業だけではなく、過疎高齢化地帯での冬場の安否確認・閉じこもり防止の効果も兼ねています。
町内外のボランティアが参加。福祉教育との連携も
平成22年の活動を見ると、西和賀町スノーバスターズ会員317人のうち、地域の沢内中学校と西和賀高校からの参加者は154人。1月から3月までの日曜日に119世帯の見守り、除雪作業を行いました。その他、町外からのボランティアも受け入れています。西和賀町社協では、冬の積雪に備えた秋と積雪時期が終わる春を中心に、住宅補修のボランティア活動が行われています。技能者組合の会員や日曜大工等で日頃から工具に慣れ親しんでいる方が「ハウスヘルパー」として活躍。戸車交換や破損したガラスの交換、火災報知機設置、雪囲いの取り外し、襖の開閉修理等、ちょっとした住宅の補修を高齢者や障害者世帯を中心に実施しています。
また、八幡平市安代地区では安代中学校の1~2年生全員(約90名)が23世帯を支えています。安代中学校ではクラブ活動の一環として交代で参加し、配食弁当のボランティアとあわせて福祉教育の実践を行っています。
(2010/12/27)
住んでいてよかったと思える団地に(東京都墨田区白髭団地)
2000世帯が暮らす大規模団地
白髭団地は、隅田川沿いに1.2キロにわたって建てられ、全体で2000世帯が住む大規模集合住宅です。団地に住み、長年民生委員も務める井上久子さんは、3・4号棟自治会に設置された「弱者支援部」の代表も兼ね、ひとり暮らし高齢者世帯への訪問活動や交流を深めるための行事など、安心して暮らせる団地をめざして活動しています。
フロアごとの班長が日頃の見守りを担当
井上さんが活動する3・4号棟は現在275世帯が入居。65歳以上の人が約35%と高齢化が進んでいる現状です。また、ひとり暮らしの高齢者世帯は49世帯あります。
自治会の「弱者支援部」では、こうしたひとり暮らし高齢者を中心に訪問活動を行い、健康状態の変化や暮らしの困りごとなどがないか、見守りをしています。「弱者支援部」は、現在3名の住民がメンバーとなって井上さんと一緒に活動していますが、すべての世帯を常に把握することは困難です。ここで見守りの最先端を担うのが、フロアごとに置かれている「班長」。おおよそ6~7世帯に1軒が1年交替で班長となり、フロア内の住民に異変や困りごと、心配な様子等が見られた場合には、すぐに井上さん達に連絡がいくようになっています。また訪問活動では、地域包括支援センターに配置された見守り相談室とも連携しています。行政の職員が住民と一緒に訪問することで、ドアを開けてもらいやすいというメリットがあります。
役割を持っていただくことの大切さ
また、ひとり暮らしの方には積極的に自治会の役員になっていただくようにどんどん巻き込んでいると言います。井上さんは、「団地の皆のために役だっているという実感が張り合いにもつながりますし、会合に出る機会も増えますので、そこでお会いできれば元気だなというお互いの安否確認にもなります。」と井上さんは話します。住民ならではのさりげない関わりが、いきいきと暮らし続けることを支えています。
墨田区全体で小地域福祉活動を展開
墨田区社協では、白髭団地のような自治会・町内会を中心とした小地域福祉活動を積極的に推進しています。活動を担う人たちの相談に乗ったり、小地域福祉活動に取り組む地域同士の交流会、助成事業等も開催しています。先行して活動している地域の話を聞いて他の地域でもサロンが立ち上がるなど、徐々に活動は広がっています。
(2012/5/23)
「ともに生きる・笑顔のまちづくり」をめざす(島根県 出雲市大津民生委員児童委員協議会)
高齢化率約26%の大津地区
島根県出雲市では、市内を32の地区に区分し地区民生委員児童委員協議会を設置しています。その一つが出雲市大津民生委員児童委員協議会(大津民児協)で、市の中央部に位置し、人口約9,490人、世帯数約3,670世帯、高齢化率は約26%を数えます。
この地区でも、生活上の「安心・安全」は住民の大きな課題です。19人の民生委員・児童委員は、「ともに生きる・笑顔のまちづくり」を活動のスローガンに、日々、高齢者をはじめとする住民の見守りや安否確認、生活課題への相談支援活動にあたっています。
住民の孤立・孤独防止に向けたネットワークづくり
大津民児協では、なにより住民の孤立・孤独の防止に力を注いでおり、民児協としての友愛訪問活動等に加え、行政や社協等の関係団体、地域住民とも連携し、「大津ほのぼのネットワーク」を形成し、その中核としての役割を担っています。
これは約20年前に委員が実施した高齢者への手造弁当配食事業を源とし、サロン活動等を経て、地域住民、企業、商工会等のネットワークであり、地域で進める福祉活動のエンジンとなり、乳幼児のサロン、就学児童への「おさらい教室」など、子育て世帯に力を注いでいます。
災害に備えた要支援者の把握
災害に備えた高齢者や障害者等への支援体制づくりが全国的な課題となっていますが、大津民児協を含む出雲市民児協では、そのための活動に積極的に取り組み、民児協と行政、社協の三者が協力し、平成18年に「出雲市災害時要支援者ネットワーク」事業をスタートしました。
この事業は、発災時に情報提供や避難支援が必要な住民にあらかじめ登録してもらうとともに、住民からの支援者確保を図り、「向こう三軒両隣」の支え合いを図るものです(平成20年3月現在登録者179名)。
こうした取り組みは各地で進められつつ、課題となっているのは要支援者本人の理解と信頼を得ることで、本人の登録を基に「災害時要支援者名簿」が作成されますが、個人情報保護に関する意識の高まりの中、名簿の管理や運用不安等から掲載を拒む住民が一定数にのぼっています。
真に支援が必要な住民が名簿から漏れないよう、民生委員・児童委員が各世帯を訪問し、丁寧に制度の内容を説明することにより理解を得ており、自らが地域で生活する住民の一員であり、日々、見守りや訪問を通じて信頼関係を作り上げる民生委員・児童委員が担える役割といえます。
(2013/8/28)
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